第二回研究会 記録誌


ホスピタルマネジメント研究会第2回勉強会記録誌 1997年7月19日

〔講演・〕
『規制緩和に伴うヘルスケアビジネスの可能性』
福山健康財団理事長秘書 メディアーク研究所所長 須磨忠昭氏

〔講演・〕
『21世紀の百貨店成長戦略・顧客満足を実践して』
プライス ウオーターハウスコンサルタント株式会社
マーケット&カスタマーマネージメント本部 マネージャー 宮副謙司氏
 
 

〔講演・〕
『規制緩和に伴うヘルスケアビジネスの可能性』
 福山健康財団理事長秘書 メディアーク研究所所長 須磨忠昭氏

1.規制緩和が意味するもの

■コ・メディカルの逆襲
 診療報酬改正の傾向を見てもわかるように、これからはチームケアがキーとなる時代となった。その成否は、コストに裏打ちされたシステムの有無にかかっている。経営者は各部門の人員とその時間給を完全に把握し、最も効率のいい分配をしなくてはならない。

■市場のキーワードと「必要性」
 従来は、必要性・欲望・要求すべてをカバーするのがサービスだったが、これからは、どうしても必要なものだけを、満足感が得られる形で保障する時代。そして、その合意が社会に求められる時代である。

■企業マネジメント神話への誤解
 医療法人に企業のマネジメント手法を取り入れることは確かに有効である。だが今、医療のマネジメントに求められるのは、臨床からその結果までの全体像を医療提供組織がきちんと評価、フォローアップ、モニターできるマネジメント手法である。そこには、その能力を備えた専門スタッフと管理コントロールシステムが不可欠。

■コスト意識の確立
 自己負担が増えればコスト意識は高まるが、一方で利用が制限され、重症になって初めて病院にかかるという状況も生まれる。重篤な臨床はコスト高。全体として医療費の軽減につながるかどうかは疑問だ。
 欧米にはゲートキーパーというシステムがあり、患者が病気になった時点で、どのようなルート・治療を経て治していけるかをアドバイスしている。コスト意識を明らかにするには有効な方法。ゲートキーパーには、医師だけでなくPTやナース、栄養士といった人たちが挙げられる。

2.今後のヘルスビジネスの可能性

■PBM的ビジネス
 PBMとは、医薬品の管理コントロール会社・人材のこと。医薬品の質を下げずにコストを下げるマネジメント手法を持つ組織を作ってみてはどうだろうか。実際にアメリカにあるものをいくつか紹介したい。
【P&Tコミッティー】
 医薬品に対して適正であるかどうか、またその使用が質を落としていないかを検討する委員会。病院やマネジメントケア会社の中にある。ある疾患治療のプロセスの中で、看護・リハビリ・栄養・医薬品・検査といったサービスが、どの段階、どの時期、どの量、どのスタッフレベルで投入されるかを標準化していく(クリニカルパスウェイ)。医薬品は全体に対する量と質が確定されており、それに基づいて処方がなされなかった場合、それを指摘し、助言・修正・新たな提案を行っている。
【ヘルプデスク】
 医師が標準医薬品処方から外れる医薬品を処方した際に、それが適正であるかどうかというアドバイスや指導をする。博士号を持った薬剤師が医師と対応。
【フォーミュラリー】
 会社・病院が、医師に「この薬には保険の償還をつけます」という品目のリスト。クリニカルパスウェイに基づいた医薬品の適正な標準量と投与量、時期も記録されている。

■HMO的ビジネス
【PRO】
 メディケア・メディケイドの利用審査をする機構。レセプトの完全管理会社などがある。今後非常に飛躍するであろうビジネスだが、難しいのは、入院前審査・退院計画・ケースマネジメントといった技巧を熟知し、病院に対してきちんと指導できるか、あるいはその基準を持てるかどうかという点である。

■VHA的ビジネス
 単独開業医をグループ化し、保険会社・マネジメント会社と契約、両者を繋ぐことで収益を上げる会社。人材派遣・事務・設備投資など、診療以外の業務をすべて代行、診療報酬の何割かを開業医に分配する。アメリカでは急速に飛躍している。

■ホームケア・ホーム建設
 病棟の近くに「ホームケア・ホーム」という部屋を作り、在宅看護関係の会社が持つ製品・サービスを全て持ち込む。患者には退院数日前からこの部屋に移ってもらい、メーカーの指導員によって説明を受けてもらう。在宅ケアに対する不安をなくし、「夢」を持って退院してもらうための施設。

■病院図書館
 学際的な本だけでなく、患者さんのライフケア、在宅ケア、薬に関する本やビデオがあり、財団や企業の寄付で運営されている。収益には繋がらないが、病院の大切な業務の1つではないだろうか。

■レディースクリニック・レディースライフケアセンター
 拒食・多食症・骨粗鬆症など女性が主にかかる病気、レイプなど女性特有に起こる悩みを女性だけでケアするクリニックや、乳ガン・子宮ガンなどに関する検査を専門的に行えるセンター。

■メディカル・イン
 外来診療が多様化し、サービスが問われる時代がやって来る。メディカル・インを作り、宿泊者に夜間や早朝に検査を受けてもらうのも1つのアイデア。また、治療や薬、在宅看護、保険のことなどについての説明を夜行う、といった副次的なサービスをつければなおよい。

 以上、21世紀の市場とその中でのビジネスの可能性について述べたが、これからのヘルスケアは、保険者・ケア提供者・利用者が三位一体となってケアの質の向上とコストの適正化を協同し、調整し、管理コントロールしてゆく時代であると確信し、大きな期待を抱いている。
 
 
 

〔講演・〕
『21世紀の百貨店成長戦略・顧客満足を実践して』
プライス ウオーターハウスコンサルタント株式会社
マーケット&カスタマーマネージメント本部マネージャー 宮副謙司氏

1.百貨店業界の環境の変化

 バブル絶頂期の80年代、小売り業界は「売り場・商品の差別化」時代であった。ブランドブームが起こり、商品の差別化とそれに合わせた店舗・売り場の大型化・高級化が競争戦略のポイントであった。が、90年代のバブル崩壊に伴って、「顧客を大切にし、接客サービスを重視した業態が百貨店の基本ではないか」という原点が見直されるようになった。「顧客と売り方の差別化」時代である。そして、顧客満足度経営が今一度、注目されるようになったのである。

2.新しい顧客満足向上戦略

 しかし、顧客のニーズが多様化した今、かつてのように「すべての顧客のすべてのニーズに答える」には、巨大な売り場と専門的な商品知識を持つ販売員を確保しなくてはならず、商品の選びやすさや人材コストの面でジレンマが生じることになる。また「顧客の要求に応じてサービスを提供する」という受け身の姿勢では準備することも多く、また苦情すべてに対応していては、本来業務にしわ寄せが来ることも考えられる。また、消費者も従来のように、百貨店的「おもてなし」を期待しているとは考えにくい。求められるのは「買いやすさ」なのである。
 このような現状をふまえて、戦略のポイントは次の3点になると思われる。
(1)「店舗の豪華さ、もてなし」よりも「顧客の買いやすさ」を重視したサービス
……顧客の行動に合わせたサービスフローを構築することが重要。
(2)「優秀人材によるサービス」から「誰もができるサービス」へ
……接客が上手とか商品知識に優れているといった特定の人間の能力に頼るのではなく、どの販売員もできるサービスで全体の水準を上げていく。企業としてのサービスの水準を明確にし、普遍化されたスキルを持って科学的運営を行うことが大切である。
(3)顧客戦略に応じたサービスの提供マネジメント
……対象を不特定な多数顧客に定めるのではなく、その企業のサービス政策に同意する特定顧客に絞り込んでゆく。そして、そのターゲットに応じたサービス、重点的なサービスに切り換え、企業に不利益な顧客との関係をなくしていこうという方向づけである。

3.顧客戦略の具体的な推進手段

(1)顧客の声を聞く
 現状分析の最も有効な方法は、やはりお客様の声を聞くこと。「お客様の声BOX」のようなシステムで直接意見を求める方法は多く取られている。また、販売員が実際に顧客から求められたことや、接客の中で気づいたことをメモし、マーケティングデータ化する方法もある。
(2)競合店との比較によって自店の問題点を把握する
(3)サービスフローを構築する
 基本となるサービスフローを作り、・や・で出てきた問題点が、そのフローの中でどこにあるのかをふまえて見直ししていくことが必要。
(4)接客時間の現状分析と時間改善の努力
 最も重要な業務である接客時間を少しでも多く取れるように、補助業務の時間を効率化することが重要である。

 以上の4つが基本であるが、そのほかにも
・顧客の苦情を減らすため、商品の取り扱い知識を販売時にあらかじめ情報として提供する(インフォームドコンセント型の商品情報提供)。
・広告によって定期的にサービス宣言を行う。
・店内でサービス担当責任者を写真入りで明示、責任と意識づけを行う。これは、顧客にも分かりやすい。
 といった手法が用いられている。

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