第四回研究会 記録誌


 
ホスピタルマネジメント研究会第4回勉強会記録誌 1997年11月8日
(地方例会 テルモ病院経営セミナー/秋田市)

〔特別講演・〕
『新しい時代の病院アメニティを探る』
国立医療・病院管理研究所 施設計画研究部 主任研究官 筧 淳夫氏

〔特別講演・〕
『患者負担増による患者動向と今後の病院経営』
財団法人慈愛会 副理事長 今村英仁氏

〔特別講演・〕
『平均在院日数短縮に向けて』
(社)病院管理研究協会 専門調査役 谷田一久氏

〔特別講演・〕
『病医院のインターネット活用術』
医療システム研究所所長 三富和彦氏
 
 
 

〔特別講演・〕
『新しい時代の病院アメニティを探る』
国立医療・病院管理研究所 施設計画研究部 主任研究官 筧 淳夫氏

 病院経営において、近年、特に注目されているテーマの1つが病院のアメニティの問題である。患者およびスタッフにアメニティ=「質の高い生活空間」を提供するために病院施設はいかにあるべきか。多彩なスライドで国内外の病院や老人保健施設の実例を紹介しながら、施設計画のポイントを述べた。

アメニティの追求とは

 10〜15年ほど前より、「患者サービス、病院のアメニティの追求」ということがいわれている。診療報酬によって施設環境に加算がつくようになったこともあり、病室や食堂の面積がどれくらい必要かなど、往々にしてこの問題は標準的な数値を求めるところに帰結しがちである。しかし、それで本当にアメニティは向上するのか。結論としていえるのは、標準を求めてもアメニティは得られないということである。それぞれの病院がそれぞれの患者さんのために独自の工夫をすること。それは金がなければできないことではない。使うべきは金ではなく頭である。

病室計画の5つのポイント

 まず、現在の病室の問題としていえることはスペースの絶対的不足である。急性期・慢性期を問わず、一般的な4床室の場合、1床当たりの病室面積は8╂必要である。収納スペースも同様。収納への気配りもなく、私物持ち込み禁止にして済ませる感覚は「アメニティ」からほど遠い。この点をふまえ、以下、病室計画のポイントを述べてみる。
【ポイント1 照明演出の工夫】
 照明はもっともなおざりにされがちな点の1つ。人間は太陽の光のリズムで暮らしている。たとえば蛍光灯は、上から照らす真昼の光に近い。それを煌々とつけておいて消灯時間にいきなり消しても眠れるものではない。夕刻の安らぎの光として白熱灯を利用するなど、リズムを作るべき。また、照明はそれ自体もさることながら、壁や床、天井から反射した光が重要。それらの色にも配慮するべきである。
 また、日本の病院は病室を安易に南向きに配置することが多いが、それでは病室内の照度分布に極端な差も出てしまう。本当に南向きがいいのか根本的に問うとともに、ひさしの長さなど考え直すべき点は数多い。
【ポイント2 基本的生活行為の保証】
 病室は一義的には治療の場であるが、同時に患者さんにとっては1日のほとんどを過ごす生活の場である。睡眠、食事、排泄、趣味・娯楽など基本的生活行為の保証が絶対に必要である。
【ポイント3 多様な病室形態を工夫】
 最近の試みとして注目されているのは個室的多床室である。たとえば4人部屋でありながら、出入り口を複数設け、家具などで仕切って個室的な雰囲気を作るなどさまざまな工夫をしている病院がある。あるいは、四角い病室自体を見直し、凸型の部屋を並べた病院の例もある。凸凸凸という状態で部屋が並び、凸の底面部分と廊下がつながる。この病室では部屋の形に合わせて個室的スペースが取れ、廊下側のベッドも窓を持つことができる。当然、病棟面積は広がってしまうが、それを上回るメリットがあり、事実、この病院では個室よりもこの大部屋のほうが好まれるという。
【ポイント4 便所の工夫】
 急性期・慢性期を問わず、各病室に便所を設置する分散型便所が増えてきている。臭い・音をはじめとして、衛生上、心理上管理すべき問題は設計の工夫でほぼクリアできるようになった。課題はあっても、これは失敗という例は聞かない。ブースの大きさ、扉、介助器具、ナースコール、レバーなど便所のしつらえも、さまざまなタイプがある。これにはただ1つの正解はない。スタッフがいっしょに考えるべき大問題。病棟によっていろいろなタイプを作ってみるのもいいだろう。
【ポイント5 院内感染対策】
 病棟内は完全空調管理されることが前提となっている。空調バランスが崩れるため、窓の開閉もままならないことが多いが、病棟内に区切りをつけて、患者さんに気持ちのいい外の風を感じてもらうことも可能。その他、廊下の有効利用、食堂・談話室のテーブルレイアウトの工夫、家庭復帰のトレーニングの場としての浴室など、病院施設はちょっとした見直しによって大きな効果があがることを強調しておきたい。
 
 

〔特別講演・〕
『患者負担増による患者動向と今後の病院経営』
財団法人慈愛会 副理事長 今村英仁氏

 9月の医療保険の自己負担増をはじめとする医療保険制度改革。それが一般病院経営にどんな影響を与えるのか。病院の過当競争地域・鹿児島市にある財団法人慈愛会副理事長・今村英仁氏は自病院を例にとって次のように具体的に述べた。

医療保険制度改革の波

 現在、論議の的になっている介護保険、第3次医療保険法の改正、高齢者医療保険制度など、いずれも平成12年からの実施が確実視されている。これらが病院経営にどのような影響を与えるのか。結論からいうと、急性期、慢性期の二極分化が進み、どちらかに生き残りをかけるしかないということである。
 9月に実施された自己負担増によってどのような影響があらわれたかをみても、それは明白である。以下、自病院の例をとって述べるが、その他、今後の病院経営を考える上では『21世紀の国民医療』(医療保険制度改革協議会)、『医療保険改革案』(厚生省)などを読みこなしておくことをおすすめしたい。

病院過当競争地域・鹿児島

 自病院のある鹿児島は、全国でも屈指の病院過多地域である。10万人に対する病院数が全国平均7〜8に対し20以上ある。今回のセミナー会場である秋田市と鹿児島市を比べても、病院の数で秋田は25、鹿児島は 110である。人口10万人に対する病床数では、秋田が1300床、鹿児島は2000床。今後、鹿児島にあるこれだけの数の病院が、すべて生き残れるわけはなく、それだけに我々は非常な危機意識を持っている。

自己負担増の影響

 9月からの医療保険自己負担増の影響について述べる。今村病院は、本院( 153床、2:1(A)看護)、分院( 177床、特・、特・看護)、本院は内科、外科、産婦人科、分院は透析、リハビリ、血液疾患を特徴とする内科系の病院で、両院とも典型的な中小病院である。
 9月以降、まず、外来については全体で 0.5%減少したものの、これはほとんど影響なしとみていいだろう。しかし、問題は入院で、全体でみると10%以上の患者減少が起きた。その原因は「紹介」の減少である。従来進めてきた病・診連携は、近所のかかりつけ医のところに来た患者さんで、手術を要するような人をうちのような中病院に紹介してもらう、という流れであったのだ。しかし9月以降、患者さんは直接大病院に足を運ぶようになった。つまり、値上がりした初診料を2回も払いたくない、どうせ行くなら大きな病院に直接行こうという患者心理が働いているわけである。これは、うちの手術数の減少からも裏付けられる。全日本病院協会の調査でも、9月以降は小さい病院ほど患者数が減り、 200床以上の大きい病院は、それ程影響がなかったという結果が出ている。自己負担増は、厚生省のいうかかりつけ医受診増加の方向と逆の動きを促しているようだ。

急性期で生き残るか、慢性期で生き残るか

  98年以降、さらなる保険制度改革が待っている。そこで生き残れるのは、まず高次機能病院、臨床研修指定をとった大病院など。問題は 200床以下の中・小病院である。先にも述べたように、「紹介」システムはこれまでのように機能しない可能性が高い。患者さんが求めているのは、24時間いつでも対応可能で、専門医療を受けられる病院である。24時間救急体制と、少なくとも地域で一番と評価を受ける専門科目、これを前提に動かなければ、急性期病院としては生き残れない。自病院でも24時間救急体制の充実に取り組んでいる。また一方、老人保健施設も新設。その関係で、ニーズの高くなった脳外科と整形外科の新設を考慮中である。
  そして、今後の病院経営でもっとも重要な要素は、情報開示を含めた情報管理である。これは、厚生省・与党側も、我々病院側が考えている以上に重要視している。情報管理をシステム化すること。これが近々の最優先事項といえよう。
 
 

〔特別講演・〕
『平均在院日数短縮に向けて』
(社)病院管理研究協会 専門調査役 谷田一久氏

 (社)病院管理研究協会専門調査役・谷田一久氏は、「平均在院日数短縮に向けて」と題し、自己が考案した「レントゲングラフ法」を用いた適切な在院日数短縮の評価法を解説するとともに、さらに重要である健全な病院経営をなすために職員が理解認識しておかねばならぬことは何かについて述べた。

レントゲングラフ法

 外来・入院・在宅という病院機能のうち、最重要である入院機能を評価するにはさまざまな平均値、代表値によってできるが、種類や複雑さから総合的に捉えることは“神業的”といえよう。
 そこで、もっと簡単に自院の現状や機能を総合的に把握することはできないか、と考案されたのが「レントゲングラフ法」である。「レントゲングラフ法」は、捉えにくかった病院の概況を全体的、総合的に、しかも視覚的に安易に把握できるのが最大の特長であり、それはちょうどX線によって全身の背骨、腰骨、手足の骨がフィルムに描出されるのと同じようであり、そこにこの分析法の命名由来がある。
 具体的には、縦軸に1日当たりの入院時医学管理料を、横軸に1日当たりの特掲診療料をとった二次元の単純なグラフである。
 しかも、入院患者を在院期間と積極的医療行為という2つの軸でパターン化している点も特色である。インプットする材料は患者さん1人1人のレセプトで、プロットすることでデータが得られ、月単位の分析となる。
 例えば月間の入院患者数を延人数ではなく実人数で捉え、入院期間と積極的医療を収入ベース(金額的尺度)でみることができる。
 大学病院と中小病院では描出されるグラフに形状的変化の差が現れることは当然だが、同規模、同経営主体、同診療科の病院でも、地域における病院の位置づけ、つまり病院機能が異なれば(診療科間で連携のない診療所集合型病院、連携のあるチーム療養型)、グラフの形状が異なってくる結果となる。
 レントゲングラフ法は、過去のある1カ月の入院患者の状況から、病院の機能を明らかにしてくれるのみではなく、院長の指示が医師たちに理解されているかどうかも明らかにしてくれる。
 ある病院の院長が、さらなる急性期医療の特化をめざし、医師たちに平均在院日数の短縮の指示を出した。数カ月後、従来の算式に基づく平均在院日数に短縮がみられた。念のためレントゲングラフ法を実施してみると、バラツキが上下の集団に明らかに二分された。上の集団は2週間以内の入院時医学管理料の点数に一列にならび、下の集団は6カ月超えの点数の下に位置した。つまり、院長指示に従って退院させやすい患者を積極的に退院させる一方、超短期で退院可能な軽症患者を選択的に入院させる結果を招いたわけである。院長の考えた在院日数短縮は、急性期医療の特化なので、医師たちにこの結果を知らせて“方向転換”、数カ月後には改善形状がみられるようになった。

健全経営のための職員能力の開発

 平均在院日数短縮、つまり健全経営を図るポイントは、いかにして職員の能力を引き出すかにあるが、その根底をなす「自院の経営理念」の理解、認識にかかっており、これを知らない人が少なくない。知らないとどういうことが起こるかというと、適切な意思決定ができないということになる。幹部会議でも、ドクターは「医師としては……」、看護婦長は「看護婦としては……」と、看護理念にもとづいた発言をするにすぎず、病院全体の立場で考えることができない。在院日数短縮問題にしても、患者数を減らすか、入退院を増やすしかないのだが、どうしたらよいか分からない。分からない、分からないといっているうちに経営は悪化、悪循環となっていく。
 この問題を含めて、職員の能力発揮なくして健全経営はなく、引き出し方には3つの段階がある。第1は、意識改革ではなくて意識覚醒(知っている、分かっている、当たり前にできる、の能力を平時的に発揮させる)。第2は、リエンジニアリング(再設計、見直し)。第3は、パラダイムシステム(新たな経営スタイルを構築させる)。
 最後に谷田氏は、13年間連続赤字から立ち直った、四国・坂出市立病院の事例を発表した。
 
 

〔特別講演・〕
『病医院のインターネット活用術』
医療システム研究所所長 三富和彦氏

 医療システム研究所所長・三富和彦氏は、目下話題となっているインターネットの医療分野での活用術について述べた。

電子メール

 インターネット人口は、一般的にも激増がみられるが、病医院でも同様傾向がみられ、平成7年の30〜40施設が平成9年の現在では 1,000以上となり、情報化時代の通信の代表的アイテムとしての地位を獲得した。
  インターネットには、(1)ホームページ(病院案内が90%以上)、(2)電子メール、(3)FTP、(4)TEL−NET、(5)Newsがあり、(1)、(2)の利用者が一番多く、特に電子メールは主に第三者とメッセージ交換に利用する電話と手紙の中間で、利点は多い。
 便利な利用法の1つは同報メールという配信法で、複数に同一のメッセージを配信する。医師会、事務長会などの開催通知に利用すれば今までよりも速く、安く、手間も少なく通知できる。
 ワープロと同様に開催通知を作成し、同報メールリストの会員に送信するが、1回の操作で作業終了、経費も60人分で市内通話料3分10円ぐらい。郵便代、電話代、宛名を書く手間が省ける。

ホームページ

 WWWという文字を目にするが、World Wide Web、つまり「世界中に張りめぐらされたクモの巣」という意味で、TV、ラジオ、新聞、チラシなどの情報媒体と比べて非常に安い。
 また、標榜科目や院長、医師が変わった場合でも、内容訂正は電話帳なら1年待つ、駅広告、電柱広告の書き換えは10,000円以上かかるが、ホームページではマウスを操作するだけで変えられる。
  ホームページの作り方は、ひとことでいえば、ワープロで文章をつくり、そこにイラストや写真を貼りつければOKで、特別なソフトを必要としない。一太郎、マイクロソフトワードなどのワープロか、エディターといわれる文章を書くことのできるソフトがあれば作成できる。

費用はどのくらいか

 プロバイダーとは、個人のパソコンを電話回線を通してインターネットに接続してくれる会社のことで、1995〜96年の1年で20社が 180社に増えた。理由は簡単で、利用者が増えたから。それにつれて接続料金も約3分の1程度下がった。
 料金が高めの大手プロバイダー、安い中小のプロバイダーの選択からはじまって、初期費用はというと、ハード:パソコン本体/約20万円、モデム(一般回線利用)/約2万円、TAアダプター・DSU/約4〜5万円、デジタルカメラ/約3万円より、プリンター/約2万円より。ソフト:WWWブラウザ/約5千円、ホームページ作成ソフト/約1万円、グラフィックソフト/約1万円。ほかにプロバイダー登録料が必要な場合がある。毎月の経費は、NTTに支払う回線使用料、プロバイダーの接続料がある。

医療機関の活用法

 医療機関における活用は、自院の広報、求人広告にとどまらず、ホームページを訪れてくれた人に役立つ何らかの情報を掲載している施設が少なくない。患者の相談に応じる医師、病気の症状や予防の説明、健康の秘訣 etc。医療従事者向けでは、救急医療マニュアル、薬剤副作用情報、添付文書、学会のお知らせ、O-157解説、専門医紹介 etc。医療機関のみではなく、厚生省、総務庁など関係省庁、そして専門医紹介、相談のための「友の会」のホームページがあり、ほかにもさまざまな医療関係団体から続々登場している。
 医療法上の広告規制の抵触が気になるところだが、厚生省は以下の見解をとっている。「利用者が自分の意志でホームページを選択し、情報を得るかたちであるからインターネット、ホームページは広告として扱っていない」
 さまざまな情報が開示される時代を迎え、医療機関のインターネットはますます盛んになることが容易に予測される。

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