第八回研究会 記録誌


 
ホスピタルマネジメント研究会第8回勉強会記録誌 1998年6月13日

〔講演・〕
『恵寿総合病院における業務改善』
・・BPR(Business Process Re-engineering) の試みと今後の戦略・・
特定医療法人  董仙会  恵寿総合病院  理事長  神野正博氏

〔講演・〕
『番組製作を通して考える医療と福祉』
フリーアナウンサー・シニアライフアドバイザー  平田由美氏
 
 

〔講演・〕
『恵寿総合病院における業務改善』
・・BPR(Business Process Re-engineering) の試みと今後の戦略・・
特定医療法人  董仙会  恵寿総合病院  理事長  神野正博氏

 石川県七尾市にある特定医療法人董仙会  恵寿総合病院(病床数 454床、診療科目20科、職員数 611名、関連施設に2つのサテライトクリニック・2つの老人保健施設・身体障害者施設)では、『質とやる気を落とさないリエンジニアリング』をコンセプトに、斬新かつ画期的な業務改善が次々と行われている。神野正博理事長が、その取り組みの内容と効果について語った。
 医療は特殊な業界であるという認識に対し、近年「サービス業」という考え方が浸透しつつあるが、まさに「技術とサービスを提供し、それによって収入を得、利益によって資本を形成する」という意味において、医療も民間企業と何ら変わるところはない。
 時代の中で、制度・市場・顧客・技術といったものにしたたかに適応していくのが、勝ち残りへの道であるといえよう。改革を行ううえでも、「同業者は」、「前例は」という考え方ではなく、異業種から貪欲に学び、「初めての試み」に着手することこそ意味があるのではないだろうか。
 また、「業務の見直し」が「リストラ」であってはならない。サービスの質とスタッフのやる気を落とさない業務改善が、各々独立したものでなく、必然的な流れの中で行われる必要がある。

1.診療材料院外SPD化(平成6年12月)

 トヨタの看板方式、コンビニエンスストアにみるJust In Timeの物品搬入による在庫削減を目指し、数々の試みを重ねてきた結果、「院外SPD(Supply Processing Distribution)システム」にたどり着いた。品物の選択・価格交渉を当院で行った後、全納入物品の窓口を1社とし、物流を委託する。商品は物流センターで小包装化し、1単位ごとにバーコードカードを添付、各部署に定数を納品する。各部署では、物品使用時にバーコードカードを外し、所定の箱の中に入れる。商品はこの時点で購入とされ、また、このカードが物品請求伝票となる。各部署から集めたバーコードデータを、用度課のコンピュータから商社のサプライセンターへ電送、翌々日には同じものが配送されてくる、というシステムである。
 これにより、発注業務、在庫管理業務はなくなり、請求支払い業務は窓口が1社になったことで軽減。用度課職員は2名になった。また、各部署の在庫は業者在庫であるために期限切れの問題もなくなった。

2.検査業務の改善(平成7年5月)

 検査業務は、1時間という時間で区切り、1時間以内に結果が出るものを院内、1時間を超えるもの、急がなくともよいホルモン・遺伝子検査などを外注とした。ただし、外注業者は1社とし、院内の全ての検査機器をバーコードによりオンライン化、外注業者の電送情報システムと統合し、さらに各診療科・病棟の端末とネットしたLAN(Local Area Network:院内ネットワーク)を構築した。
 検体検査業務の軽減により、検査技師を生理機能検査へ振り向けることができ、検査待ち時間も短縮された。電話による問い合わせや伝票運び業務も削減。また、1社と提携することによるコスト削減、システム導入費用低減化という効果もあった。

3.薬剤在庫管理システム(平成7年10月)

 薬品に関しては、薬事法やメーカーと卸間の系列など障害が多かったが、根気強く交渉した結果、卸1社による薬品在庫管理システムを構築することができた。
 診療材料同様に、薬品を小包装化し( 1,000錠を 200錠ずつ5パック)、それぞれにバーコードカードをつけ、薬品庫出荷時にチェックする。ある発注点に達すると、電話回線により自動発注。このシステム導入により、発注点は著しく低下、在庫は導入前の2分の1に減った。納入薬品の変更は一切行っていない。

4.病院広報

 平成8年3月に、病院のインターネットホームページを開設した。広報活動はこの他に、広報誌『ほっとたいむ』、週に1回ラジオでの健康相談、記念日の無料相談やイベントなどを行っている。

5.大型医療機器共同利用制度(平成8年7月)

 開業医に受診した患者が大型医療機器による検査を必要とする場合、現況では2回受診し、2回初診料を払うことになる。そこで、当院の医療機器を開業医のものとして使ってもらう制度を考案した。レセプトは開業医から請求、当院のフィルターは全くかからない形とする。当院のメリットは、開業医からの使用料と、「患者様にとって、1度来た病院は再度来やすい」ということである。

6.事業所内PHSシステム(平成8年10月)

 院内の医師の呼び出し、確認業務はPHSで行っている(院外では公衆PHSとして使用できる)。電磁波の影響については、各機種で実験を重ねた結果、問題なしと出たため、導入を決定。電話交換業務が非常に楽になっただけでなく、待ち時間が激減し、効果は大きかった。

7.放射線デジタル画像処理システム(平成8年10月)

 将来の電子カルテへの対応もふまえ、各種画像検査を電子化した。CRシステムとDMS(Degital Management System)により、各レントゲン室の端末と現像機を光ファイバーで結び、どの撮影室からでも同じところからフィルムが出る。撮影は全自動で、デジタルフィルムは光ディスクに入れて保管することができる。すべての情報は統合して管理・保管され、必要な時に簡単に取り出して見ることができるようになった。

8.統合オーダリングシステム(平成9年1月)

 必然の流れとして、前述のさまざまなリエンジニアリングの統合が次の課題となった。これまでのバーコード管理をそのまま継承し、診察券・カルテ・医事・看護・給食・薬剤業務・職員の管理まで含む病院のすべての業務をバーコードに対応させるシステムを構築。院内にバーコードリーダー付きのパソコン約 230台を設置した(機器はコスト節約のため各々分注、通販なども利用した)。
 院内の資料には、職員の名札にいたるまでバーコードをつけ、情報、指示、すべてがバーコードで入力される。さらに10月からはイントラネットサーバを稼動。院内文書を電子メール化し、伝票類・患者様への案内書などもサーバに入れて、必要な時に取り出すようにした。これにより、院内の印刷物はほとんどなくなった。このシステムは、情報を「患者様を取り囲む“球状のもの”」と考えて作り上げたものだ。オーダリングシステムは経営上なかなか着手し難いものであるが、待ち時間の大幅短縮など、患者サービス面でのメリットは計り知れない。この取り組みは、今後さらに、電子カルテ導入へとつなげてゆくつもりである。

9.クレジット払い導入(平成9年4月)

 医療費をクレジットカードで……という発想には驚かれることも多いだろうが、やろうと思えば簡単に導入できることである。当院では若い世代の多い産婦人科を中心に利用されている。

10.自家発電、コジュネシステム(平成9年6月)

 コンピュータ導入を機に、自家発電システムも導入した。駐車場4台分ほどのスペースで、 800キロワットの発電。日中の電気はすべてまかなっている。これにより、年間 2,000万円ほどの利益をもたらしている。

委託事業

 現在当院は、2つの町からデイケアセンター・在宅支援センターなどの公営施設の運営を委託されている。きっかけは、無医村にある当院の関連施設と近隣の施設を併せて『医療福祉ゾーン』を作り、経営を安定させようという試みからで、こちらからの提案で他の施設がいくつか新設された。
 OUT SAUCING という考え方が広まりつつあるが、外部への委託だけでなく、逆に病院の持つノウハウを外部に放出し、委託を受けるという方法を、今後どんどん考えていくべきではないだろうか。
《神野氏のホームページ》「http://www2.biglobe.ne.jp/ kanno/ 」                  
 

〔講演・〕
『番組製作を通して考える医療と福祉』
フリーアナウンサー・シニアライフアドバイザー  平田由美氏

 平田由美氏は、テレビかながわ製作の『ふれあい医療福祉』という番組のキャスターを3年間務め、報道の立場から医療と福祉を見つめてきた。当番組は、木曜日1時15分から12分間の放送ながら、時間帯視聴率は非常に高く、殊に近年、視聴者の関心はますます高まってきているという。平田氏は番組の内容を紹介しながら、特に介護者、患者からの角度に視点を定めて、医療と福祉に対する提言を行った。

番組を通して見えてくるもの

 番組の出演者は、医療機関関係者が最も多く、ついで公共機関、民間サービス、一般市民という順である。番組の性格上、医療機関の協力は不可欠で、主旨に賛同し、協力を快諾していただいた鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市、 596床)を中心に、出演・協力の体制が整っている。
 回を重ねるごとに増えてきたのは、介護体験者など、一般市民の出演者である。介護者の気持ち、体験から生まれる数々の知恵など、実際に介護をした人からしか聞けない話は多い。
《番組例》
●『介護者の気持ち』
 出演:寝たきりのご主人を介護した女性と、その支援をする訪問看護ステーションの所長。
 所長は「私たちの仕事は、患者を支える家族をサポートすること」と語る。
●『痴呆高齢者の在宅介護』
 出演:「もえぎの会」代表 秋山昭子氏
 秋山氏は、痴呆症の母とその看病から病気になった父を12年間介護、その中で自宅の8畳間から「もえぎの会」を発足、痴呆介護のデイサービスを始めた。両親を亡くした現在も続けている。
 この他にも、ボランティアとして介護に関わる方々には多数出演していただいた。
●『呆け老人をかかえる家族の会』
 '80年京都で発足、全国37都道府県に支部を持つ。相談窓口では、1人の相談者に医療関係者・福祉関係者・介護体験者の3者が対応し、介護者の大きな支えとなっている。
●『明日の看護を考える会』
 定年退職した看護婦さんを中心に、医療・看護関係者が24時間体制で待機。医療や看護に限定せず、どんな相談にも乗っている。医療関係者が一度外に出て、外部から見た目で、かつ経験を活かしながら行っている活動は、市民にとって非常に心強いものである。
 このような活動例は、いずれも医療機関や福祉サービス等ではなかなか手が回らない隙間部分であり、実は患者・介護者が本当に欲している支えの部分である。
 例に挙げたさまざまな活動は、一朝一夕にできるものではなく、大きな苦労と何人もの人々の協力の上に成り立っている。地道に続けられているこれらの活動をもっと一般の方々に伝えていきたいと思う。と同時に、市井から生まれている多くの芽を費用やマネジメント等の面で支援してくれるところはないだろうか。支援を期待したい。
 介護は生活そのものである。私たちは、介護者を24時間体制で支えてくれるサービス(例えば訪問看護ステーション等)を望んでいるが、一部の医療従事者の中には、こうした24時間体制に反対する声もあると聞く。これには驚きを通り越し、憤りを覚えるばかりである。
  あくまで医療・福祉は、私たちが安心して暮らせるためのものであってほしい。

福祉サービス考

《番組例》
●『ホームヘルプサービス』
●『ショートステイ・デイサービス』
●『グループホーム』 など。
 グループホームは、在宅福祉と施設福祉の両方を繋ぐ、また両方の長所を持つものとして新しくでき始めた制度である。痴呆者を対象とし、特養や病院に行くほどではないが、在宅では介護が難しくなった人、また痴呆の程度が進んだひとり暮らしの人が、家庭的な生活を介護を受けながら続けるためのホームで、8名を定員としている。痴呆者のためのサービスには、他にも特別養護老人ホームの痴呆棟や、痴呆者のためのデイサービスなどがあるが、一般にはほとんど知らされていない。番組で何度か繰り返し放送しても、なかなか浸透しないのが現状だ。しかし、放送すれば反応は確実にあり、手応えを感じている。まだまだ十分とはいえないサービスを拡充させていくためにも、とにかく繰り返し伝え、声を上げていくことが必要だと思っている。

医療福祉に変革の波?

 「変革の波が来ている」といわれるが、それを強く感じているのは、おそらく医療関係者ではないか。報道という立場からでも、その波はまだ、さざ波くらいの感じだ。最もガラス張りであるべき世界でありながら、最も情報の開示が遅れている世界、それが医療の世界という気がする。患者の意識が少しずつ変わってきている今、どんどん情報開示を行っていただきたい。その意味では、報道の必要性も非常に感じているが、外部からの取材にはやはり限界がある。病院からの、病院独自の広報活動にも、もっと力を入れていただきたい。
 患者の立場で病院を選択する際、観点となるのは、医療の質と「どんなサービスをしてくれるか」ということである。サービスには、患者の声がすみずみまで反映されることを望みたい。また、スタッフ1人ひとりがプロに徹していることは(医療に限ったことではないが)、最も大切なことである。職員の教育にも力を注いでいただきたいと思う。
 さらに今後、医療・福祉の中で患者の「心のケア」が重要であろう。各病院がどのように対応していくのか注目したい。この「心のケア」については、番組でもしっかり取り上げていきたい。

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